まったく!あの眉毛はどこにいるんだか…。この学校だだっ広いんだから勘弁してよねー。
 好き、なのはわかったっていうか…私も同じ気持ちだったし、そりゃあ嬉しいけど。でも、自分で言ったわけじゃない。
 そして、イギリスから聞いたわけじゃない。
 どうせなら、ちゃんと本人に伝えたいし、あいつの声で、聞きたい。


「あぁああ!!もー!マジでどこにいるんじゃー!はぁ…はぁ…」


 生徒会室、欧州クラスの教室、職員室、その他諸々…。
 イギリスのいそうな場所をくまなく、否、学校中を探し回ったけど、彼はいなかった。
 放送室でも使う?校内放送で告白する?
 ってオイ!アホか!万が一居なかったらっていうか居ても恥ずかしくて爆死するわ!


「こうなったら…校外探すしかないじゃん…」


 行くしか、ないよね。というか、あんな顔したヤツ、私は放っておけない。
 昇降口へ向かい、自ら頬を叩き、気合を入れた。


「よっしゃ!体力バカの酒々井桧!必ずアンタを見つけ出して、心の底から気持ちぶつけようじゃないの!」


 行くぞーっ!
 駆け出し校門へ一直線!
 って、あれ…


「馬…?」


 こんなところに馬?ちょっと誰だよ!馬はちゃんと厩に入れておけっての!
 それにしても綺麗な馬だなー。真っ白い毛に綺麗な瞳。そして何でも貫きそうな角。


「角…?」


 おいおい。角のある馬なんている?そんな馬見たことないよ!
 馬じゃないとしたら、何よ?
 っていうか、ちょっとちょっと。横を通り抜けてく生徒さん。あの馬(仮)が見えてないの?完全にスルーしてるぅう!見えてるの私だけ?もしかして亡霊?いやいやいや!私オバケは専門外ですから!
 と、とりあえず学校出て探しに行かなくちゃ…。
 馬(仮)の横を私も、そ知らぬ顔をして通り抜けようとした。が、


「(お馬(仮)さんこっち見てるよぉー!?!)」


 チラリと一瞥すれば、白馬は首をこちらに向けて、その双眸は私を貫いていた。気付かなかったフリをして通り抜けようとしたが、私にはそれが出来なかった。
 湖のように澄んだ瞳。そこに、イギリスの姿が見えたような気がした。
 私の足が、勝手に白馬のほうへ向いていた。


「あの…」
「……」
「って、話せるわけないんだけど。えっと…」


 うん。何話しかけてるんだ私☆
 えっと…うんと…などと唸っていると白馬に鞍と手綱が現れた。(どんな手品?まぁお化けだったら何でもありか…)


「…乗れ、ってこと?」


 話せないのでもちろん返事はないのだけど…。
 もうどうにでもなれ!と、私は持ち前のノリと勢いで、白馬の背中に飛び乗った。
 すると馬は「待ってました!」とばかりに嘶き、走り始めた。
 初めての乗馬にも関わらず何故か私たちの相性は抜群だった。私は馬のことが手にとるようにわかった。
 きっとこの子はイギリスの場所を知っているのだろう。でなければ、こんなに嬉しそうに駆けることは出来ない。
 そして私のことも知っている。私もこの子のことがわかる。
 不思議と、心が安らいでいく…。
 周りに私と白馬の姿は見えていないようで、世界には私たちしかいないような感覚に包まれる。
 イギリスの元へ向かう途中、私の頭にある光景が流れた。

 夜、イギリスの家。イギリスが小さな白馬を撫でている。
 いきなり白馬は庭のほうへ走りだし、そこには私が倒れていて…


 そうか。きみが、わたしを…。


「ありがとう。私を見つけてくれて」


 私とイギリスを出会わせてくれて。


「ありがとう、ユニコーン…」


 白馬のたてがみを、イギリスがそうしていたように私も静かに撫でる。
 「どういたしまして」と、聞こえた気がした。



――――――――――



 数分後、私とユニコーンはとある公園にたどり着いた。
 そこは私とプロイセンが出会った公園だった。
 ユニコーンから降りて公園内を探し回ると、二人の男の姿が見えた。
 って、ちょっとぉお!!なんで殴り合いの喧嘩してんのォ?!まるでボロ雑巾じゃないの。


「イギリス!プロイセン!ちょっとアンタら何やってんの!」
「「?!」」


 うわ、見事なハーモニー…。って、そうじゃなくて。


「いやん!私のために喧嘩し「ちげーよ!」痛っ!冗談に決まってるじゃん…」


 私がボケるとすかさずイギリスが的確な突っ込み(チョップ)をくれた。それを呆けて見るプロイセン。
 身に余る突っ込みをくれたイギリスは腕組をすると、私に質問をしてきた。目は、合わせずに。


「で、何でがここにいるんだよ…」
「あー。えっと、その…」


 言いたいことがある本人にこういわれるとなんていうか、緊張する。
 しかもプロイセンという第三者つき。なんという公開告白…。
 私がしどろもどろになっていると、プロイセンが足を動かした。


「はぁ…俺は帰る。じゃあな」
「あ、ちょっと待って!」


 今度はイギリスが、私とプロイセンを見ていた。


「んだよ」
「プロイセン。アンタは、私の…親友2号だからね!」
「2号かよ!」
「だって1号はハンガリー…」
「…じゃあな」

「がんばれよ、


 そう言ったきり、プロイセンは歩き出してしまった。(離れゆく彼には、ユニコーンの姿は見えていないようだった)
 彼の背中に私はこれ以上声をかけることが出来なかった。私は選んだから。
 でも、プロイセンの最後の言葉(口パクだったけど)に勇気をもらった私は、後ろを振り返りイギリスを見る。


「俺は、の何なんだ?」


 寂しい眼をしたイギリスをまっすぐに見つめて私は答える。


「イギリスは、私の…一番大切な人」
「…」


 寂しさが、驚きに変わる。


「私は、イギリスが好きだよ」


 一番言いたかったことを言い終えると同時に、私はイギリスに抱きしめられた。

 言葉にして伝えなければ相手には通じない。相手にはわかってもらえない。現に、私は言葉を使って相手に伝えた。
 だけど、イギリスの体温を直に感じる今、私たちは言葉を解してないのに通じ合っていた。抱きしめてくれる腕全てが私に伝えてくれる。


「そういうのは、もっとわかりやすくしてくれ…バカ女…」


 でも、彼の口はとても天邪鬼だった。(それはそれでイギリスらしい)