今まで何をしていた?どうしてここにいる? 時間は戻らない。過ぎ去っていく、常に、今も。やり直しなんてものはない。ただ、心に残るものは何? それは… 最近のイギリスは、生徒会がものすんごい忙しいようで、帰ってくるのが遅い。今日も「遅くなる」ってメールが来た。これで「遅くなる」と言われたのは5回目だ。 私は一人で食事をするのもつまらないので、毎日、律儀にイギリスが帰ってくるのを待って夕食にありついてるわけだけど…。今日は私も用事があるので遅くなる。ということを伝えにイギリスがいる生徒会室へ向かった。 メールでも良かったのかもしれないけど、今日は雨が降るらしく、今朝、家を出るときにイギリスが忘れて行った折りたたみ傘を届ける…という目的もあった。それなら直接、用事があることも伝えようと思ったわけだ。 生徒会室まであと少し。 いきなりバァーン!ってドア開けたら生徒会メンバー、びっくりするかな? よーし、やっちゃろ! …あれ?既に、ドア、開いてる? ったくもー、扉はちゃんと閉めとけっつーの! あ、じゃあ…中で何やってるか覗いちゃおうかなー! こっそーり、抜き足、差し足、忍び足…。 「でばがめ〜」 中にいるのは、イギリスとスーノ?二人だけ? 何してんのかな? 「何し、て…。え……」 瞬間、頭を鈍器で殴られたようだった。 目を見開いた私の視界が、ぐにゃりと歪んだ。 動悸が激しい。何も考えたくない。でも私の思考回路は言うことを聞かない。どうして? なんで?なんで?なんで? 『あ、すみません…』 なんで、私は今このとき、この場所にいるの? なんで、スーノがイギリスにキスしてるの? なんで、こんなに心臓が痛いの? どうして、私は泣いてるの? あぁ、そうか… 「私、イギリスのことが好きなの…」 (私、イギリスのこと好きなんだ…) 呼吸が荒くなる。嗚咽が混じりそうになる。必死に口を閉じ、息ができないくらいに両手で塞いだ。 ここに、いられない…。 ―――――――――― バン! と、人一人余裕で入れるくらい開いて、残り数センチもなかったドアが全開になった。 その音に、はっとしてイギリスは振り返る。 「よう。悪いな邪魔して」 「なんだ、プロイセンか…」 「なんだとはなんだお前!」 振り返ったところにいたのがプロイセンだったことで、イギリスは無意識に安堵していた。 しかし、二人きりだった生徒会室に思わぬ来訪者が来たせいでスーノの顔は不満そうなものになった。 「プロイセン、何しに来たのかしら…?」 「これを返しにきたんだ。それ以外に特に用事はねーよ」 そう言ってプロイセンはポスカを取り出した。 「それなら机に置いといてくれ。後で俺が戻す」 「わかった」 用事を済ませたプロイセンが早々に生徒会室を出ようとした矢先、イギリスが「ちょっと待て」と止めた。 「お前、いつからそこにいた?」 「来たばっかりだけど、何だよ」 「いや、別に…」 「見たの?」 イギリスは先ほどの光景が誰にも見られてないなら…と、話を流そうとしたが、意外にも、スーノがプロイセンに聞いた。 プロイセンは「何をだよ?」と、質問しようとしたが、先ほどの光景を思い出して、質問せずに 「…見てねーよ」 とだけ答えた。そして「じゃあな」と、生徒会室から出て行く。 (見てねーよ。俺はな。) ―――――――――― 「プロイセン、このポスカ返しといてね。ついでにシュレジェンを私に返し…」 「いや俺はポスカ返したら直帰するじゃあな!」 ったくよー!本当に毎度のことながらシュレジェンシュレジェンうるせーな!ゲシュタルト崩壊するっての! しかもこのクソ広い校舎でわざわざ生徒会室に行くってのもだるいったらありゃしねぇ。 …あー、あと少しで生徒会室か。 あ?生徒会室前に誰かいるな。あれは確か、2週間前にイギリスが連れてきた女か? どうしたんだ?中に入らねーのか?あそこに突っ立ってられると邪魔だな。どいてもらうか。 お、丁度いい。退いたな。え、こっちに走って…早っ!右によけ、ってあいつも右に避けやがっ ドンッ! 「わりぃ!」 「す、すみません…」 避けるの間に合わなかったじゃねーか。っておい、こいつ泣いてんのか? なんて気付いて、引き止めようとしたが、そそくさと行っちまいやがった。 どうしたんだあいつ。生徒会室で何かあったのか? 何があったのか知りたくて、俺は生徒会室を覗いた。 そこにいたのはイギリスと、もう一人の転入生だった。 (そういうわけか…) いくら俺でも、こんなもん見て、あの女の泣いてる顔を見たらわかる。 何故か俺は、泣いてる女が放っておけなくて、鈍いイギリスが許せなかった。 別にイギリスがモテてるからってワケじゃねーぞ!俺は一人が好きだからなハハハハハ! ムカついた俺は、既に開きかかっている扉を勢いよく開けた。 ―――――――――― 涙が頬に張り付くのと、唇に触れるしょっぱさがうっとおしい。 「あ…イギリスの傘、教室だ」 あんなもの見て、泣きながら、それでもイギリスの傘のことを考えてる私に、私は苦笑した。 どうせなら下駄箱に入れてやろうと思ってたのに…。でも、もう教室に戻りたくない。 いいやもう。 「私の傘だけど、ないよりマシでしょ」 そう言って、悲しくなる。というか、私が置いていかなくてもスーノが居れば大丈夫なんじゃないか。 スーノが…。 「はっ…くっ…うっ…ううっ…」 雨が降ってきた。イギリスの下駄箱に傘を入れた途端、降り出すなんて、なんの嫌味か。 「バカ。バカ!ううっ、ィ、ギリスの…」 違う。一番バカなのは… (私だよ…) 何気ない日常の中にあったもの。どうして今まで気付かなかったんだろう。…気付いたときには、もう遅かったけど。 さきほどの光景を思い出し、嫌な記憶が連鎖して、ここにくる前のことを思い出した。 泣いてるし、頭がかち割れそうだ。胸は痛くて、心臓が破裂しそうだ。いっそ割れて、破裂してしまえばいい。 心に残った傷みを掻き消すように、私は雨降る街へと駆け出した。 (gdgdだし超展開すぎてサーセンw) |