「アンタは私を殺す気かァーーーーーッ!ううっ…」 朝、ひとつの家に響く怒号。ひとつの家?はっ、俺の家だよ!昨日の夜、突然の俺の家の庭に現れた、というか寝てた女、の声だ。一応俺の家に泊まっているし、自分のついでではあるが朝食を出してやってるのに「殺す気か!」だと?そんなわけないだろうが!もっと静かに出来ないのか?朝一で勝手にシャワーも浴びてるし(「だってイギリス寝てたし、許可とるためにわざわざ起こすのは忍びなくて」だそうだ)…淑女の嗜みってものが感じられないな。レディファーストではなくてレディセカンドにしたくなるような女だ。 話によるとは「国」ではなくてただの人間のようだし…。ここに来た理由も原因もわからない。「寝てただけ」と言っていたが、俺にも信じられない。よりにもよって何で俺の家…「イギリス」なんだ?どうせなら日本のところに行くべきだろう。 俺は新聞を読みながら、俺の作った料理を食べて嘆くに返す。 「文句があるなら食べなくていいんだからな…」 「だが食う。まずくても、朝は食べなかったら始まらないし。空腹は最高のスパイスっていうし」 だ、だが食う、ってな。どっちなんだ。腹が膨れるならなんでもいいのかお前は…。 「はぁ…。お母さんとの料理が恋しいなぁ。早く帰りたい…」 安心しろ。俺も早く帰したい。そのためにも、 「食べて少ししたら日本の家へ行くぞ。適当に準備しておけよ」 「わかった。…ごちそうさま!」 叫ぶほどの文句を言ったくせにきっちり食べやがった。そういえば、アメリカも俺の料理に文句言ってたな(あいつはハンバーガーしか食べないくせに)。しかも残す。けど、は残さず食べた。う、嬉しくないわけじゃないぞ!が初めて俺の料理を食べきってくれたとかそんなんじゃないからな! 日本には話し方が数種類(丁寧語、尊敬語、謙譲語とか)あるらしいが、は絶対口がいい方では無い。英語で聞き取れる俺にもこいつはきっとそうだと断言できる。言い方や態度が既に悪いからな。さっきの文句も最悪だった。あとで日本にも聞いてみよう。 と考えていたのだが 「これ、こっちでいいんだよね?」 「ん?」 新聞から目を離し、を見る。まぁ、口は悪いが…礼儀はあるようだ。 「ああ」 は自分が使った皿だけでなく先に食べ終わっていた俺の皿まで流しへ運んでいった。しかも洗っているらしい。(水の音がする)しばらくすると皿洗いの世話しない音が止み、うがいの音がした。は歯ブラシがないからうがいをしているんだろう。 昨日きたばかりというのに、は既にこの状況になれているのか…。文句を言ってからすぐにテンションが下がって俺を呆れさせたと思いきや、何も言わずに食器を洗ってくれるなど感謝すべきこともしてくれる。まだこいつに会って24時間もたってないのに、日本に会うまでいまだ振り回されるんじゃないかと思うとため息が出た。 「何ため息ついてんの?幸せが逃げるよ!早く吸って!」 「誰のせいだ!」 振り回されるんじゃないか、ではない。既に振り回されている。 ―――――――――― 「突然、イギリスさんの家にですか…」 俺は日本にの紹介と状況を説明した。日本も驚きが隠せないようだ。ついでに「これは新刊のネタに使えそうですね…」やらなんやらつぶやきが聞こえたが。いや、聞こえなかったことにしよう。 ここに到着したときのも最悪だったな。出向かえにきてくれた日本を見るや否や「ほわぁあ?!癒し系だァ!可愛い!」とか言いながら日本に抱きつこうとして…お前はフランスか!それともスペインか!俺が止めなければ日本が危なかった。そういえばその時も日本は驚いていたな。「本当に日本人ですか?」俺もそう思う。 「私にも何故さんがこの世界へ来たのかはわかりません。その場に居合わせたわけでもないですし。ただ、本当に日本人だということはわかります」 「そっかー。まぁ日本くんに日本人って認めてもらえただけでもいいや」 「いいのかよ!って、そうじゃないだろ…」 「まぁ、認めますが」 の明後日の方向な答えっぷりに日本も若干呆れているようだ。呆れて「埒があかない」と思ってくれたのか日本が本題を話す。 「その…さんは元の世界へ戻るため、日本人同士なので何か出来るんじゃないかと思って『日本』である私に会いに来たのではありませんか?」 「お前、今朝は早く帰りたいって言ってたじゃないか」 日本の本題と共に、今朝の自身が言っていた目的はどうしたのかと俺は言った。するとは、ハッとした顔になって俺達を見た。しかしすぐに少し笑って 「気が変わったんだよ」 と言い出した。気が変わった?と日本と俺は首を傾げた。は続ける。 「だって、異世界に来るなんて経験めったに出来ないし、すぐに帰っちゃうのはもったいないかなぁって思って」 変かな?と問いかけられたが、変だろ。俺もファンタジーとか好きだが「すぐ帰るのはもったいない」は変だ。さらにはニヨニヨした顔になって続ける。 「それにあんなクソマz…な料理を毎日食べてるなんてかわいそうだしー、この私が料理をつくってやろうと思って。それなら変じゃないでしょ?」 あぁ、それなら変じゃないな。…変じゃない、か?っていうかそれって、おい! 「お前まさか俺の家に泊まるのか?!」 「うん。答えは聞いてない」 聞けよ!しかも何で俺の家なんだ?ここは日本の家に泊まるべきだろう。わざわざ俺の家に泊まる必要性を料理以外で説け!この頭のおかしいボケ女をどうにかしてくれ日本…と思ったが 「よかったですねイギリスさん。これでおいしい料理が食べられますよ。和食はすばらしいですから。さんの料理がどんなものかは知りませんが」 「ボケはお前もか日本!」 「ボケ?」 「いや…何でもない」 「私は和食以外も作るよ」 俺の負けだ。完敗だよ。「日本」には勝てない。強国だ…!なんといってもが強力だ。 「ということで、これからもよろしく!」 俺が悩んでるとは露知らず、は呑気に挨拶してくる。この嵐のような女にまた振り回されるのかと思うと憂鬱になる。しかし悩んでるヒマなどなく時間は過ぎていくだろう。日本もあっさりの意見を受け入れ俺の家に泊まることに意義はないようだし(何故だ!?)、これはもう俺が折れるしかないのだろう。 「あぁ…」 とりあえず俺は返事をした。 が俺の家に泊まるのはのためじゃない、俺が料理を作らなくて済むようにだ。そう思うことにした。 それから少し雑談をして(そのときにがちょうどトイレで席を外した時間があったので「あいつの口調は悪いんじゃないか?」と日本に質問したら苦笑いしてやんわり流された)、昼食の時間になったので日本に和食をご馳走してもらった。日本が出した料理に対して「俺とは文化も味付けも違うが…確かに旨いな」と俺が、「これ参考になるー!」とが感想を残した。 残念な結果になったが(いろんな意味で)、目的は果たしたので帰ることになった。門のところまで日本が送ってくれて、「また月曜日に」と言って日本とは別れた。 隣にいるが「今日の夕飯は何しようかなー」と言っているのを聞いて、まぁ少しくらいは期待してやるか…と俺は思った。しかし 「あっ!服も買わなきゃ!あと歯ブラシも!イギリス、お店の案内頼んだ!あと金も!」 俺に安息は来ない。 |