休み時間。俺のここ最近の日課は教室の窓から校庭を眺めることやった。


「はぁ〜」


 うわっ。なんや今の俺のため息!
 まるで恋する乙女やん。や、あながち間違うとるわけでもないんやないかな…。言うなれば『オトメン』やな。現に今の俺は隣のクラスのちゃんにフォーリンラブしてもうてメロメロや!脳内はちゃんでいっぱい。ちゃんパーリィ開催中やー!ほんでなぁ、最近の休み時間は校庭でバレーボールをするちゃんを毎日眺めとるっちゅーわけや。あの可愛い可愛いちゃんが動くたびにスカートが揺れる。そしてスカートから覗く足が、やっぱり可愛くてやっばいねん。あーもーどないしよ。どないしたらええん?

 そや!日本みたいな和服もよう似合うてるけど、俺が作ったフリフリも似合うと思うんや。
 昔っからオカンに内緒で近所のロヴィーノやフェリちゃんの服繕ったり内職のバイトでバラこさえたりしとるうちに趣味・特技になってもうたアレを今!活かすときちゃう?!
 あーあー!でもやっぱあかんかなぁ。女の子は普通男らしい奴に憧れるもんやし。一応サッカー部副部長務めさせてもろてるけど、実は乙女趣味の男やってバレたら、キショイって言われてもーて俺の恋は終わってまうかもしれん…。それはあかんなぁ。うん、あかん。乙女趣味暴露ダメ、絶対。あかんあかんあかん…


「あかん!」
「うぉっ!いきなり叫ぶなよ!」
「ぅわあ!すまん!」


 俺が一人で考え事(もといちゃんパーリィ)をしとったら傍にフランシスが立っとった。なんやもー驚かさんといて。


ちゃんか〜。あの本田菊の双子の妹。若干、高嶺の花なんじゃないのか〜」
「え?」


 何を話すかと思えばちゃんの話題やった。


「好きなんだろ?」
「は!?ちゃうちゃうちゃう!ちゃうし!」
「そうなのか?ならお兄さんがちゃんに猛アタックしちゃうぞ☆」
「なっ!それだけはあかん!」
「なんだよ。アントーニョが好きじゃないならお兄さんが何したっていいじゃないの」
「あかんたら、あかんのや!」


 なんやーフランシスの奴もちゃんのこと狙っとんたん?うわー。強力なライバル出現とちゃうのコレは…。鬱やわー。
 フランシスの方が女子にモテるし。いっつも女子侍らしとるし…。はー。鬱や死のう。
 いやいやいや!ちゃんに思いを伝えるまでは死んでも死にきれんて。まだ早いで俺。
 思いなおして窓から乗り出した身を廊下に戻す。


「何やってんだお前はぁーッ!目の前で死なれる俺の気持ちも考えてくれ!」
「すまん。ちょぉ早とちってもーた。俺、教室戻るわ」
「あ、あぁ。死ぬなよ」
「気ぃつける」


 っちゅーか、フランシスおったんやな。ライバル発言みたいのされた後はもういなくなったもんやと俺はてっきり思っとった。…また俺のメルヘン(鬱)ワールドに一人で入ってしもた。悪い癖や。脳内にちゃんて天使さんがおらんかったら本気で死んどったかもしれんけどな!

 フランシスのせいで午後の授業も鬱で過ごし凡ミスを多発。
 部活もシュートは一本も決まらんし、アーサーに焦げたスコーンを食わされた。キャッチ&リリースしたけど。
 せやけどアーサーのせいやない。
 今の俺は焦げたスコーンもおいしいトマトも何も入らへん。これも全部フランシスのせい…。
 今なら黒い手が出そうや。









「はぁ〜」


 部活も終わって放課後。休み時間とはうってかわって負のオーラたっぷりのため息(恋するオトメンのため息ってことに変わりはないけど)を数え切れないくらいほど吐きながら、とぼとぼと駅前の商店街を歩いていると


ちゃん?)


 俺の憧れのファンシーな雑貨屋の前にちゃんが立っとった。
 でもあそこは俺も入ったことないんや。さすがに男一人で入るには勇気がいるっちゅうか…。でもめっちゃ入りたい。
 ああ!そうや!今ならちゃんを誘って入る事も出来るんやないの?!ちょ、俺、頑張れ!頑張れアントーニョ!お前は今オトメンから漢になるんや!


ちゃん」
「うわっ!ア、アントーニョさん!どどど、どうしたんですか?」
ちゃんこそ、お店の前で突っ立ってどないしたん?入らんの?」
「あ、あの…。その…」
「ん?俺には、言いにくいこと?」
「そんなことありません!…実は、」


 話によると、ちゃんはお兄ちゃんである菊のために手作りのプレゼントと料理を作る予定らしい。(その気持ちだけで最高のプレゼントやと思うけどな)
 せやけど裁縫の苦手なちゃんは作れなくて、お店で買うてあげようとしたところ、俺が来たっちゅうわけや。
 料理も断念しようとしてたらしい。
 あれ、でもちゃん…


「キミ、家庭科部やなかったっけ?」
「そ、そうなんですけど…全然上達しなくて…。部活で修行してたまには兄に楽をさせてあげようと思ったのですが」
「からっきし、っちゅーわけや」
「は、はい…。すみません。こんなことアントーニョさんに相談しても…」


 俯くちゃん。(その悲しげな顔にキュン死にしてしまいそうや…)
 俺に相談しても意味ないって思っとるんやろうか…。すみません。ちゃんの苦手なことは俺の得意分野です。
 あーいや!せやけどやっぱり男がファンシー好きで料理や裁縫が得意なんてドン引きしてまうんやないか…。
 でも、俺はちゃんの役に立ちたいで…。


ちゃん。男が料理手芸が得意なんは、どう思う?」
「え?男の人がですか?えっと…パティシエやシェフにも男性の方はいますし、手芸が得意な男性も凄いと思います!どちらも私は出来ませんから、憧れます」
「それ、マジで言うとる?」
「はい。マジです」


 こ、これはフラグ立ってるんとちゃう!?
 いてもたってもいられずちゃんの手をとり俺は言うた。


「俺でよかったら協力するで!」
「えっ?!アントーニョさんが、ですか?」
「本田家は菊が帰ってくるかもしれんし危険やな。作っとるとこ見られとうないやろ?」
「は、はい」
「ならウチに来ん?出来る限りは教えたるから…」
「本当ですか!お願いします!」


 キタ――(゚∀゚)――!!
 む、胸がキュンキュンして爆発しそうや!

 早速家に招待し、家の中の裁縫道具と材料の全てを引っ張りだしてきた。あのお店に入れなかったのは残念やけど、すぐに潰れるわけとちゃうし、今は俺ん家でプレゼント作るほうが大事やしな!家に来てヤることは一つ?ちゃうちゃう!今の俺は子作りより手芸で物作るほうが重要やねんて!
 あー!隣にちゃんがおって、布と針に触れてるこの瞬間…。幸せすぎて蕩けそうや…。


「アントーニョさんって凄いんですね!」
「あ、あぁ。昔から無理に手伝わされとってな(本当は自分の意思でやっとるけど)」
「こんな可愛いの…プロ級じゃないですか!」
「い、いや…(ちゃんのが可愛いで…)」
「サッカーしてる姿も素敵ですけど、こんな特技もあって…凄く羨ましい…」
「え?」


 サッカーしてる姿も…って、それ。普段から俺の姿見とったってこと?
 な、なんやそれ…。ちょ、今フラグ何本立っとんの?!これは告るべきなん?!でも怖い!フラれたら怖い!あああこんなとこでまたオトメン出てきよる自重して。俺は男なんや!男はガツンと言うべきなんや!


ちゃん!」
「はい。なんですか?」
「俺、ちゃんのこと、す、すすすすっ!」
「す?」
「好き、なんや…」


 言 っ て も う た !


「え…?あ、はい!私もアントーニョさんのこと好きです!これからも仲良くしてくださいね!」


 え?


「素敵な友人を持てて、私も幸せです!兄も喜ぶと思います!」


 あぁ orz そっちかぁ…!
 でもちゃんが幸せなら俺も幸せ、やで!
 ………前途多難すぎて涙目や…。


○○趣味はやめられないっ!

、アントーニョさんに嫁入りしてもらいなさい)