『文化祭で使う予定だったあの道具どうする?買う?』
『どっちでもええよ。任せるで^^』
『じゃあ買っとくよ=3どうせ私のお金じゃないし(^∀^)』


 私は学校からの帰路に着きながら、今度の文化祭についての話し合い――と言ってもメールだけど――をアントーニョとしていた。
 4月、係りや委員を決める際にアントーニョと私はジャンケンで負けてしまい文化祭実行委員というとても面倒くさい委員に決まってしまった。最初はイヤでイヤで仕方なかったけど、やっていく内にだんだん楽しくなってきた。…それも、アントーニョのお陰だけど。
 一緒に委員をしていくうちに、アントーニョの性格にだんだん惹かれていったわけだ。疲れたときも、アントーニョと話していると元気になれる。忙しいときも、アントーニョとやれば楽しくなる。(今日はアントーニョが「外せない用事があるんや」と言って先に帰ってしまったけど)

 メールをしているうちにマンションのエレベーターが私の住む階に到着した。廊下を通り、家につく。
 ドアを開けようとしたら鍵がしまっていたので、鞄から鍵を取り出そうとしたら…ちょ、無いぃい!?!?
 や ら か し た ー !
 今日は鞄を変えて学校に行ったから…そのせいだー。と、ドアの前でうなだれる。そのとき、丁度メールが来た。


『よろしゅうな〜(^ー^)b』


 はぁ〜。買いに行きたいけどさ。家に入れないとかマジ無いわ〜って感じなんだけど。しかも自転車の鍵も入ってなかったし…。今ばかりはアントーニョのお気楽思考はむしろ逆効果だよ…。人が家に入れなくて困ってるっていうのに!
 とりあえずアントーニョにメール返すか。


『うは!死んだ\(^o^)/鍵が無くて家に入れないwwww』


 送信しました…というメッセージを確認して、家の扉によりかかる。
 今日も遅くまで委員会活動で残って、その後のコレとか…無いよなー。
 軽く憂鬱になりながらボーっとしていると携帯が震えた。


『大丈夫?今どこにおるん?』


 ぅおーい!


『家の前でしょww空気読んでちょうだい!』


 というメールを送信しようとして、思いなおす。
 今なら電話すれば出るかも!

 プルルルル プルルルル
 数回のコール音のあとに『もしもし!』という声。あ、今ちょっと泣きそうになった。安心して。やっぱりアントーニョと話すと元気出るかも。効果絶大。


「あ、アントーニョ?」
『そやで〜。っていうか!大丈夫なん?』
「大丈夫だけど、ちょっと心細いかも。お母さんがもうすぐ帰ってくると思うんだけど、それまではまさかの放置プレイだよ」
『放置プレイて…。今どこにおるん?』
「家、の扉の前」
『そうか…』
「電話、かけてゴメンね。いきなり」
『ん、大丈夫や!』


 やっばい。元気出る。
 アントーニョは普段のボケっぷりからか、電話に出ることはまず無いし(気付かない)、メールだってあまり返さないようなやつだけど…今日は神様が私のところへ舞い降りているらしい。嬉しすぎてたまらない。
 その後も学校の話や友達の話をして、時間をつぶしていた。アントーニョに「ちょっと待って」と、ひとこと言ってから携帯の時間を確認すると通話時間が20分になっていた。それがあっという間だったのは、言うまでもない。
 まだまだ話していたいけど、さすがにこれ以上話し続けると電話代がバカにならない。
 惜しいなぁ…と思いつつも向こうのアントーニョに話しかける。


「あのさ、さすがにこれ以上は話し続けると電話代やばいから電話、切るね。あ、でも家に入れるまでメールしてもいい?」
『別にええよ!』
「うん。ありがとう。それじゃ」
『じゃ』


 アントーニョの電話が切れる音が聞こえて、私も電話を切る。さぁメールを打とうかと思ったところでエレベーターが到着するのが視界に入った。
 …ええっ?!


「あああ、アントーニョ!何で、ここに?!」
「何でってそんなん一つしかないやーん!が家に入れん、寂しい言うてたから」
「いや、寂しいまでは言ってないけど…。っていうか、なんで私の家知ってるの?」
「ロヴィーノと幼馴染やろ?せやからロヴィーノから聞いとったんや!」


 あ、そういえばロヴィーノとアントーニョって仲いいんだっけ?(ロヴィーノは必死に否定してるけど)
 それで知っているからって、ここまでしてくれるなんて…。でも、


「だからって来るの早くない?」
「どこでもドア!」
「…アントーニョ」
「嘘です。ロヴィーノの家にいました」


 プッツン…。


「外せない用事ってなんだアホーーーッ!遊んでるならアンタが買いに行けばいいでしょーがぁあ!」


 ここに来てくれたのはものすごく嬉しいけど、この残念な頭をどうにかしてください。



20分間のキセキ

(ASKY=アントーニョすごく空気読めない)