なんてことはない。男女ってものは惹かれあうもんだ。
 ただ、私と、目の前にいる男――ギルベルトは運が悪かった。好きな人には既に相手がいたわけだ。
 そして私とギルは緊急会議…うーん、まぁ以前から相談し合っていたので緊急というか定例会議なわけだけど、今日もそれを行っていたわけです。


「ギルさーん。今日はローデリヒさんとエリザベータが一緒にいるところは見かけましたかぁ?」
「いいえーさーん。お前様こそフランシスとセーシェルは見かけましたかー?」
「ノー」


 とある教室に向かいあって座る私達。下校時刻間近、西日が窓から差し込んでもの凄く眩しい。
 見かけましたかーなんて言っているけれど、見たら私達の心がもっとブロークンハートするのは間違いなしなのは目に見えている。辛すぎてむしろ笑いがこみ上げてくる…。
 だけど、やっぱり好きな人の姿というのはみたいものなのだ。ギルがエリザベータのことを好きなのを認めたのはつい最近だったけど、お姉さんには全部お見通しですよ!


「なんだそのお姉さんってのは…」
「えー。フランシスの真似だよ」
「げっ!あんな変態の真似して何が面白いんだよ!」
「エリザベータも負けず劣らず腐女子っていう変態だよ」
「…」


 かくいう私もエリザベータとは腐女子仲間なんだけどね☆


「好きなんだから、真似したくなるじゃん」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」


 まぁ、ギルがエリザベータの真似してたらドン引きだけど。あ、そういえばローデリヒ×ギルベルト(リバ有)の新刊出来たとか言ってたから強奪しに行かなきゃなー。このCP話までギルに言ったら、いつもみたいな普憫な感じじゃなくてマジ切れされそうだから絶対に言わないけど。さすがに貞操も命も守りたい。


「はぁ、明日からどうすっぺか?」
「なんかやる気しねぇよなぁ」
「うん、もう学校すら行かないで引きこもりたい」
「遅刻常習犯が引きこもってどうする。単位落とすぞ」
「わかってらぁい」
さ、その変な話し方やめねぇか?」
「やめたらギルは何かしてくれんの?」
「…そうだな、昼め「だが断る」
「まだ話してる途中じゃねーか!」
「でさ、突然話が変わるんだけど」
「なんだ?」


 女は話題がころころ変わる、と聞いたことがあるけど、私なんかはその典型だと思う。
 ギルと出会った当初は絶えず「いきなりかよ!」と言われまくったけど、今ではそんなことはまったくない。
 それくらい、一緒にいる時間が多くて仲良くなったってことだと思う。
 

「セーシェルもフランシスもローデリヒもエリザベータも…みんな好きなのに、この渦巻いた感情は、なんだろうね」
「俺が知るわけねぇだろ」
「それもそっか」
「つーか、俺も聞きてえよ」
「いや私には聞かないで」
、ちょっと面貸し「おっといけね!もうこんな時間だ!今日は親と用事があるからこの辺でお暇するわ」
「ちょwおまww覚えとけよ!」


 用事なんてものは嘘だけど、これ以上お互いに傷を舐めあうのはもうしたくなかった。今日はもう疲れた。
 と言っても、また明日になればまた傷を舐めあうんだろうけど。私たちの発言なんてその場しのぎの軽いもんだし。

 そうやって、かわいそうなお互いの存在を確かめ合って生きている。
 そしてこの無為な時間が刻々と過ぎて、私達の存在が風化するのを待っている。



合成す僕らの心

「ギル!このチラシ見て!」
「あ?なんだそりゃ?」
「私と一緒に組め!」
「はぁ?」