「き、菊…?そ、それは何?」
「何って…ナニですよ!」
「卑猥にすんな!巫女服とか宮司の服って言え!」


 あたしと菊は付き合ってる。彼が実はオタクだってことも知ってる。
 でもさ、彼女にまさに「コスチュームプレイ」を強要する彼氏ってどうなの?お前等は満足か?俺は嫌だね…!


「まぁ、着てくださいよ。そうでないと今度ヤりながら深夜アニメ見ますよ?」
「あなたはどこのコーサカですか?」
「エロゲの方が好みでしたか?」
「勘弁してください」


 まるで初号機と(カヲル君が操る)弐号機のように取っ組みあうあたし達。いくらなんでも、ね、コスプレは勘弁していただきたいものなんだけど


「無理やり脱がして、着せる前に啼かせますよ?」


 なんて耳元で言われたものだから


「き、着ます…着させてください!」
「はい、どうぞ」


 菊は二次元が絡むと途端に強気になるんだよね…。そこのとこ、どうにかしていただきたいのだけど…。
 いやだいやだといいつつも、実はこれ10回目だったりするんだけどね。1回、マジで啼かされたことあるからね。大人しくしたがっているわけですよ。今度は、巫女服…。まったく。とんだ性癖だよね!仕方なく別室で着替えて戻ってくると菊は言った。


「道場へ行きましょう」
「は?」


 言われるがままに道場に着いて、あたしは木刀を持たされた。菊もあたしも剣道が得意…っていうかそれがきっかけで出会ったんだけど。蓋を開けたらただのオタクでした。
 向かいあい、礼をする。そして木刀を右手から左手に持ち変えようとしたところで菊に「型ではなく本気で斬りに行きますが、避けてくださいね」と言われちゃったんだけど…演出まで凝ってるよ、今回は特に。はいはい、と、とりあえず蹲踞して構える。
 道着ではなくわざわざこんな服まで着させて菊は…。なんて呆れながら考えていたら菊が本気で踏み込んできて(道場に菊の声と踏み込みの音が響く)、はっとしてすかさずに受け止める。


「ちょっと菊!こんな服まで着せて何がしたいの?!」
「あなたが好きです」
「…へっ?」


 いきなり何言っちゃってるのこの子?そりゃ知ってる、けど…。
 あたしは呆けそうになるんだけど、構わず菊は切り結んでくる。


「あなたの瞳が好きです。夏の銀河のようにきらめく瞳が。夏の日差しのような全てを照らす眼差しが好きです」
「な、何言って」
「あなたの髪が好きです。そよ風にひらめくシルクのような、サラサラの髪が好きです」
「ちょ、っと!いま本気で髪の毛…っ!」
「あなたの唇が好きです。蜜のような口付けをくれる。切ない吐息を聞かせてくれる唇が好きです」
「そ、それは菊が!」
「あなたの声が好きです。程よい高さの、芯のある、心に染みとおる澄み切った声が好きです」
「くっ…!」


 そこまで言って、菊は柄頭であたしのお腹を攻撃してきた。かなり手加減してくれたのか、意識は失わずにすんだけど…。菊は倒れそうになるあたしを支え、あたしの腰に手を回し、


「っ!?」
「あなたの体が好きです。普段は強気なのに、抱きしめると折れてしまいそうな実は華奢な腰が」


 そしてあたしの胸に頭を寄せてきた。


「薄くて、でも形の良い胸が。重ねた肌から伝わってくる温もりが好きです」
「ば、ばか!道場でなんてこと…」
「でも、一番好きなのは、あなたの心です。決して誰にも弱さを見せない。でも、もろくて傷つきやすくてどこまでも純粋で美しくて、全てに許されたくて、全てを許したがっている人間らしさに満ちた魂が」
「き、く…?」
「好きです。大好きです。あなたの全てが愛おしくてたまらないんです、。あなた以外のものなんか、もう何もいらない。ただあなただけが欲しいんです。あなたと私、二人だけの永遠の夜が…」
「本気で、言ってるの?本当に、あたし以外には何もいらないの…?」
「…」
「菊?」
「………」
「………」




















 正直、ちょっと怖かったけど…呼びかけても反応しない菊を見て、以前にもこんなことがあったのを思い出した。(こいつ…!ププッww)
 あ、いや、とりあえず一発やっとかないと。


 バチーーーン!


「な、何するんですか!人が必死でセリフを思い出してる最中に!」
「だからでしょ!あたしにとっては好都合だったけどね!…それで、今度は何の真似?」
「これです」


 そう言ってどこからかDVDを取り出した(マジでどっから取り出したの?)。


「『神無月の巫女』?これ、女の子二人じゃん」
「はい!これは百合モノなのですが、かなり感動します!是非今度見てください!あなたがオタクでもパンピーでもどっちでもいい!登場人物が女だとか男だとかそんなことはいい!(ガンダムを写せ!)凄い純愛なんです!泣けるんです!」
「そ、そう…。じゃあ、暇な時にでも見るよ」
「はい是非!…ですが、今は」
「え、ちょっと、まっ!おすわり!」
「今の私は欲望のままに行動する『犬』のようなものですが、あいにくと『言霊の念珠』は付けておりませんので。ごちそうになります…」



電波で伝わる愛もある

(あの時言った『セリフ』、あながち嘘でも無いですよ?)


 後日、その百合アニメを見て号泣しているがいたとかいなかったとか。









――――――――――

 この本田、実はあたしだったりしますよ?←
 要は『神無月の巫女』がまさに神アニメだということです!ムッハー!(鼻の穴を盛大に広げて)
 テレビで見て(当時中3w)、11話Bパートからガチ泣きしてましたww
 そしてこれを書くために11話B〜12話を久しぶりに見てガチ泣きしましたwwwwww
 ここでは「ハァハァ斬り」という、クーデレな娘が恍惚とした表情で清純な娘を斬る、驚くか笑っちゃう場面を抜粋しましたが、その後からが神展開です。セリフは菊とウチの快活ヒロインに合わせて改変しました。
 ナニを間違ったか興味を持った方は「日刊ようつべ(ローマ字)」まで!続きはwebで!

タイトル→夜風にまたがるニルヴァーナ様(携帯サイト)