機械音の響く室内。人々の声、声、声…。男同士、女同士、カップル…。たくさんの人がいる。
 俺は今、ゲームセンターにいる。フランシスや菊に誘われて、学校の帰りに寄り道してるってとこだ。俺はゲームとか苦手なんだけどよ…。フランシスは女だけのグループのとこに行ってナンパしたり、菊はUFOキャッチャーでフィギュアをとったりしている。UFOキャッチャーって、何でUFOなんだろうな。頭で考えたり口に出す度にアルフレッドの顔が…やば、体調悪くなってきた…。


「エリザベータ!これ見て!このプーさんめがっさ可愛くない?!お尻に落書きされてるやつ!」
「うん!たしかに可愛いわ…(の方が可愛いわよ!)」
「いいなぁ…。あたしがもっとUFOキャッチャー上手かったらなぁ…。菊に、頼んでみようかな」
「そうね、それがいいんじゃないかしら!(彼ならどっかのバカと違ってとってくれそうだわ…)」


 あれは…とエリザベータ?あいつらも来てたのか。まぁ女子ってのはプリクラ撮ったりが主な目的だろう。と、思ったけど、UFOキャッチャーもするのか?けど、金入れないで去っていったし…。今見てたのはプーさん?へぇー。普段の暴力的な性格に反してプーさん好きなのか…。って、よりにもよって尻に落書きされてるやつかよ…。


「よぉ!」
「うわっ!って、なんだ、お前か…」


 なんだとはなんだ…。と、ブツクサ言いながら肩に手をまわしてきたのはフランシス。耳元で何か囁いてくるんだがやめろよ気持ち悪いなぁ!


「知ってるか?明日はちゃんの誕生日だってこと」
「誕生日?それがどうしたんだよ」
「はぁ?さっきの見て無かったのか?ちゃん、このプーさんが欲しいって言ってたんだぞ!これはもう、盗って取ってあげるしかない!」
「いや、俺、これ苦手だし…」
「俺たちには神がいるじゃないの」
「神?…菊のことか?」
「ウィ!おーい!菊!ちょっとこいつに神業を伝授してくれるか?」
「神業?ふふふ…ついにアーサーさんも目覚めてくれましたか。いいでしょう。ではフランシスさん、お金を!
「俺かよ!」


 かくして俺のUFOキャッチャー特訓は始まった。


「これは、まず小さい箱を取って景品を交換するものですね…。私が指示を出すのでその通りにやってください。アーサーさん、それでは早速200円を入れてください」
「ん、ここだな」
「では、横ボタン…重要ですからね!フランシスさんのお金とはいえここ重要ですからね!いいですか?私の指示と寸分の狂いもなくボタンを離してくださいね!」
「は…はいっ!」
「では押して…離して!」
「おう!」
「その調子です。次に縦ボタン。ここも重要ですよ!」
「よっしゃ来い!」
「押して…離して!」
「おらァ!」
「はい!その調子です!…あぁ、落ちてしまいましたか。まぁ最初だから仕方ないですね」
「そ、そうだよな…。俺やっぱり向いてないんだよな…」
「違います。アーサーさん。こっからが本番!です。幸いアームは強めのようですからね、続けましょう。フランシスさん、500円を!
「また俺?!っていうか金額が上がってるんだけどォオ!」
「早く出せよ!」
「はぁ…なんで取ってやれって言っちまったんだ…」


 あの後、俺は菊の指示どおりにUFOキャッチャーを操作して、無事にプーさんを取る事ができた(500円で3回できるから、その3回で取れた)。菊はあの後もぬいぐるみを取ったりしていて…なんつーか、次元が違った。今回は菊が指示を出してくれたけど、きっともう今後やることは無いと思う…。それにしてもこのプーさん、デカイな。50cm以上あるぞ?男がこれもって歩くのはちょっときついと思うんだけどよ…。


「ところでアーサーさん、そのぬいぐるみはどうして取ろうと思ったのですか?」
「えっ?あ、あぁ、これはだな…」
ちゃんにあげるんだよ。まぁ、お兄さんのお金だけど…ね……」
さんにですか?!では私の家の近所ですから、今から行きませんか?」
「それもそうだな。こんなの持って帰ったら家族になんて言われるか…」
「いいぞいいぞ!それなら今から行こうぜ!お兄さん出歯亀しちゃうぞ☆」
「ここです。私の家は隣。いわゆる幼馴染なんです。萌えポイントを押さ…
「近いなオイ!…なんか言ったか?」
「いえ、なんでもありませんよ?では、頑張ってきてください。フランシスさん、帰りますよ!」
「え、えぇ!?俺も見た」
「フランシスさん?黄金の右足が光りますよ?
「すみません、帰らせてください。…じゃ、頑張れよアーサー!」
「えっ?!ま、待て!お前ら俺を置いてくなァアアアア!!」


 い、行っちまいやがった…。なんで?え?いやいや。別にさ、友達にぬいぐるみあげるってだけじゃねぇの?告白とかじゃねえし、なんかあいつら居なくなったから妙に緊張してきたじゃねぇか!…こ、このままプーさん持って帰るわけにもいかねぇし…。ぁあ!ちくしょう!やればいいんだろやれば!

 ピンポーン…ガチャ


『はーい。どちら様ですか?』
「え、えっと、お、おれだ!
おれおれ詐欺ですね、わかります。引っかからないので帰ってください』
「アーサー・カークランドだよ!」


 「うん、インターホンから見えたけど」と言いながらガチャリと扉を開け、が顔を出した。わかってんなら帰れとか言うなっつーの…。


「なに?どうしたの?っていうかよくあたしの家知ってるね…」
「それは、菊に聞いたんだ…。で、だな…これ、やる!」
「えっ?これ…くれるの?」


 バッ!とプーさんを差し出してやれば、は驚きつつも俺の手からプーさんを受け取った。そして顔を綻ばせてぬいぐるみに抱きついた。


「ありがとうアーサー!」
「べ、別にお前のためじゃねぇぞ!フ、フランシスが取れっていったから」
「あ、そう…」
「いや、あの、違っ!えっと…」

 うわっ…。何言ってるんだ俺!確かにフランシスが取れって言ったけど、いや、うん、これはのためだ一応。なのになんで否定してるんだ俺はぁああ!ちくしょう!!自分がムカつく!言い訳…言い訳…


「俺、本当はUFOキャッチャー苦手だし、これも菊のお陰で取れたようなもんだし、取ったはいいものの持って帰るわけにもいかねぇし…。運よく、菊と一緒にいたから菊の近所にお前が住んでるって聞いて…。それに、、あした誕生日なんだろ?」
「な、なんで知ってるの?」
「これもフランシスだ…」
「そう。あのバカ…」
「ん?」
「ううん。なんでもない。フランシスの提案って言っても、アーサーが取ってくれたんだよね?」
「まぁ、そういうことだな。一日早いけど…Happy Birthday、
「えへへ…ありがとう!じゃあ、この子はアーさんって名前つけるね」
「アーさん?なんだそりゃ」
「アーサーがとってきたプーさんだから、アーさん!」
「そういうことか…。じゃ、まぁ、大切にしろよ」
「もちろん!アーさんとは今夜から一緒に寝るよ」
「あっ?!あ、いや、なんでもねぇ…。じゃあな」
「バッハハーイ!」


 ま、まぁ喜んでくれるなら悪かないな…。また菊に教えてもらうのもいいかもしれない。
 それにしても、最後の『アーさんと一緒に寝る』って…なんだあれ…。心臓にめちゃくちゃ悪いぞ!一瞬聞き間違えて何言ってんだこいつって思ったじゃねぇか。べ、別にと一緒に寝たいだなんて思ってねぇぞ!今日ぬいぐるみ取ったのだって菊とフランシスがいたからで…。勘違いすんなよな!



UFOのつれてきたもの

(それはIと愛をつめこんだくまのぬいぐるみでした…)


「ん?一人で何やってるんだいアーサー!」
「うぉわあ!?!ア、アルフレッドか…」
「クレーンゲーム?あぁ、またにあげるんだね!」
「なんでわかるんだよお前!」
「ヒーローだからね☆」
「(クレーンゲーム?!そんな呼び方もあったのか…)」



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プーさん…ネズミーは危ないですかね?
リラックマと迷ったのですがプーさんがお尻に落書きされてるのが好きでそれにしちまいました。
黄金の右足=SH2(ホラゲ)で主人公が敵にとどめをさすときに右足で蹴るのでww
フランシスがエアーフランシスな気もしなくもないけど、私の文才が無いのだとスルーしてください…。